第18回 SODECソフトウェア開発環境展でプロジェクト管理ツールを巡る。
毎年恒例のSODEC(ソフトウェア開発環境展 2009年5月13日〜15日)に参加するために、東京ビッグサイトに行ってきました。
豚インフルエンザ騒動の最中ですが、例年と変わらず数多くのビジネスマンでごった返していました。
さて、今回の目的は大きく二つ。
1つは、プロジェクト管理ツールの最新事例をチェックすること、もう1つは、IPAのSEC(独立法人 情報処理推進機構Software Engineering Center:未踏IT人材発掘・育成事業などをやっている組織です。)がおこなう、プロジェクト管理に関するブース内セミナーに参加することです。
プロジェクト管理ツールの最新状況
SODECの全体的な規模はそれほど変わっていませんが、プロジェクト管理系に関する出展は一時のブーム時期に比べて少なくなっている気がしました。
名の知れている、マイクロソフトのMS-Projectは出展もしていません(CRMソリューションを中心に出展自体はしています)。他ベンダーによるMS-Projectを利用したサービスやアドインツールも全く(見落としたかもしれませんが・・・)見かけなかったのが印象的でした。
大きな展示があった企業とツールは以下の通り。
ITエンジニアリング(株) :PRIMAVERA(※ 製品はOracle社のもの):全社共通プロジェクトマネジメントシステムのスタンダード
IBM:Jazzプロジェクト / Rational Team Concert 等:理想的なソフトウェア開発環境を追求する製品群
(株)システムインテグレータ :SI Object Browser PM :総合プロジェクト管理システム
(株)テンダ :Time Krei :グループウェアとプロジェクト管理を統合したマネジメントシステム
(株)デンソークリエイト :TimeTracker FX :現場視点で、直感的に操作できる工数・プロジェクト管理ツール
(株)ニルソフトウェア :プロジェクト計画ツールWBSPad:大規模プロジェクト設計が可能なWBSツール
展示されている製品は、従来のローカルアプリケーション型かクラサバ型、WEB系でもローカルサーバーを立てるものがほとんどで、SaaS型のWEB提供プロジェクト管理サービスの展示はありませんでした。これは、かなり現状の実感と異なります。SaaS型プロジェクト管理系サービスは、海外企業を中心に星の数ほどあるとおもうのですが、そういった企業は全く出展していません。WEBの世界では、このような展示会にマーケティングコストをかけて営業する時代ではなくなってきたのかもしれません。ただ、今出展すると逆に目立っていいような気もしますが。
今回プロジェクト管理ツールの最新状況を調査するに当たって、以下のポイントをクリアしているかをチェックしました。
- 複数プロジェクトの履歴管理ができるか?(WBSのテンプレートを管理したり、終了後のWBSも過去情報として管理できるか? )
- フォアキャストマネジメントができるか? (Planを保持したまま、着地見込み戦略としてのETCを任意に変更できるか?)
- EVMS管理ができるか?できるのであれば、EV(Earned Value)を達成パーセンテージからでなく、任意の計算式を設定して仮定値を自動計算するようにできるか?(ACとEACの比をBACにかける等)
- API等によって別ツールとシステム連携が可能か?
- クリティカル・パス分析ができるか?
- PERT図がかけるのか?
かなり細かい条件になりますが、特にWBSを管理するPMツールに関して言えば、これらの条件が必須となります。なぜ必須なのかは、プロジェクト・マネジメントプロセスの根本思想にかかわるポイントなので、別途解説の記事を書きたいと思いますが、単純に言えば、私が現在利用している独自のExcelによるWBSツールと同等の機能を持っている上で、弱点をカバーする物でなければ意味が無いからです。
まず、1〜3の条件は、既に私が作成して利用しているExcelによるWBSツールによってクリアできている部分です。4の条件はExcel版だとかなり苦しく、5,6,に関しては現状Excelだと対応できていないウィークポイントとなっています。特にクリティカル・パス分析は、Excelで作られているWBS管理ツールの宿命のようなもので、普通実装していず、無理矢理実装していたしても、重く、融通が利かない物になってしまっていて実際価値があまりない、というケースが大半なのではないでしょうか?
というわけで、これらを調査したのですが、結論から言うと全てクリアしているのは、ITエンジニアリング(株) が日本展開するOracleの『PRIMAVERA』だけでした。
それ以外のツールでは、1〜3のポイントをクリアしているツールも皆無であり、『PRIMAVERA』以外のツールは、Excelを初歩的に利用した管理の枠をでない、というのが正直な感想でした。(※ IBMのJazzはそもそもツールのスコープが違う物なので対象から外します)
まぁ、そもそもの話、『PRIMAVERA』はプラント工場建設などの、エンジニアリング業界標準ツールであり、プロジェクト・マネジメントの概念自体が多くその業界から生まれてきたという事情もあるので、当然といえば当然です。
ITエンジニアリング社の方にいろいろお話を伺いましたが、やはり大規模プロジェクトを本腰入れるのに利用することを考えると、操作性や安定性といったところも含め、かゆいところに手が届く仕様になっていることがびしびし伝わってきました。プロジェクト管理用語やそのポイントに関して話しても、話がかみ合わなかったり理解してもらえないということは全くなく、まさにエンジニアリングPMの雄のツールを担いでいる、といった貫禄の方々でした。
そんな『PRIMAVERA』のウィークポイントは2つで、
- そもそも大型案件に社内標準として導入することを前提にしているため、小中規模のプロジェクトにサンプル的に利用する、といったことに全く向いていない(機能が重厚長大過ぎる)ということ
- 値段が非常に高いということ(※ 値段も聞きましたが、アライアンス等でフレキシブルに変わるため、公開はしません。が、ユーザー1人あたりのコストは他ツールに比べて格段に高くつきます)
という感じです。
PRIMAVERA以外、全てExcel管理とたいして変わらない簡易WBSツールであるという現実が、これらのツールがターゲットにしているIT業界のプロジェクト・マネジメントの状況を表している気がします。そこに至っていないのか、本質的に至らなくても十分なのか、また別のルールと理由があるのか。じっくり考える必要がありそうです。
とりあえず、PRIMAVERAのような本格PMツールでしかクリアできないポイントを押さえつつも、シンプルで安い、導入障壁の低いWBSツールを開発したら、売れるんじゃないかとしみじみ思いました。とりあえず自分は使いたいので。
IPA-SECによる、プロジェクト管理に関するブース内セミナー
以下の5つの内容で発表が行われたのですが、非常に盛況で、SODECの他分野のブース内セミナーも含めても1,2を争う盛況ぶりだったのではないでしょうか。
- 10:30~11:00 ソフトウエア開発定量データの見方・使い方
- 11:10~11:40 定量的品質予測のススメ
- 11:50~12:20 プロセス改善のススメと進め方
- 12:30~13:00 ITプロジェクトの『見える化』
- 13:10~13:40 ITプロジェクト『見える化』の実践
人々の興味を誘う内容であったこともありますが、各回セミナー終了後、アンケートと交換で、IAP-SECが出版しているプロジェクト管理に関する本を無料配布していたことも、盛況の利用の一つでした。さすが国がやっている機関だけあって太っ腹です。

実はこれらの本、PDF版であればいつでも無料で手に入れることができます。IPA-SECのホームページで無料ID登録すると、PDF無料ダウンロードができるようになりますので、興味のある方はお試しください。特に『ソフトウェア開発データ白書』は、見積もりやテストフェーズで、自分のプロジェクトの位置づけを確認してクライアントと交渉するための有効なツールになると思いますのでオススメです。
肝心のセミナーですが、これは若干物足りないものでした。
定量的&見える化を推し進め、エンピリカルソフトウェア工学(実証的に現場データを収集し、改善に結びつけるソフトウェア工学)を提唱する組織だけに、定量データを収集・分析するノウハウと具体例はふんだんに説明されるのですが、では、その分析結果をどのようなアクションに結びつけ、定量的にどんな改善に結びついたのか、といった説明がされることはありませんでした。たとえば、コードチャーン(ソースコードの改変ボリュームの時系列グラフ)の変遷グラフをみながら、『この大きな変化の部分は、大きな仕様変更が起きたためです。』といったような感じです。
現場の定性的な状況を、定量的に『見える化』することにも当然意義がありますが、データ分析は当然未来のアクション判断の為に利用されるべき物です。分析→アクションの実例や定石こそ、『見える化』して共有化したいものですが、現状その段階まで至っていないようでした。
また、完全にウォーターフォール・人月・SLOC&ファンクションポイント などをベースに話が進んでおり、AgileのAの字も出てこなかったことも、ソフトウェア開発の品質や生産性を考えるに当たって、片手落ちなものに感じました。
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